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益田ミリ『マリコ、うまくいくよ』あらすじ&感想【+読書のおとも】

こんにちは。
アラフォー専業主婦のCoccaです。

今日は、イラストエッセイの名手・益田ミリさんの作品の中から、2018年に発行された『マリコ、うまくいくよ』のあらすじ&感想をまとめてみたいと思います。

プラス、読書のおとも「おいしいおやつ」もご紹介させていただきます

※以下、ネタバレもありますのでご注意ください。

『マリコ、うまくいくよ』あらすじ

益田ミリさんの作品は大好きなので、新刊が出たらすぐに読むようにしているのですが、この『マリコ、うまくいくよ』は手に取るタイミングが遅くなってしまいました。

この作品は、3人の「マリコ」が主人公です。

マリコたちは同じ会社に勤めるOLさんで、それぞれの勤続年数は2年目・12年目・20年目とバラバラの世代。

彼女たちの関係性は、特別に仲がいいというわけではなく、つかず離れずの、社会人としてちょうどいい距離感を保っている間柄です。

そしてマリコたちは、職場での立場は違っても、三者三様に悩みや葛藤を抱えながら、毎日を懸命に過ごしています。

たとえば…

入社2年目のマリコ(24歳)

自分が仕事をしていることにどこか現実味がなくて、突然大人の社会に放り込まれてしまったような感覚で会社員生活を送っています。

先輩であるマリコたちの職場での振る舞い(処世術)を目にするたびに、ちょっとイヤな気持ちになってしまうお年頃。

一方で、自分自身は会議でなかなか発言ができないことに、強い劣等感を抱いています。

決して態度には出しませんが、「同期には負けたくない」というささやかなライバル心も心の片隅に芽生え、毎日モンモンとしているところです。

入社12年目のマリコ(34歳)

新人でもなく、ベテランでもない、中途半端な立ち位置の自分。

会社でのキャラ設定がブレはじめていることに危機感を持っています。

男性社員から女性として扱われなくなる日がそう遠くない未来にやってくることにも気づいています。

若い世代(24歳のマリコ)の態度にも、ベテラン(42歳のマリコ)の振る舞いにもイライラしてしまうことがあるのですが、なにより、自分自身がこれからどうしていきたいのかを明確に打ち出せないことに対してあせりや不安を感じてしまう毎日。

ついつい「会社をやめたい」という思いが頭に浮かんでしまいます。

入社20年目のマリコ(42歳)

勤続年数が長いだけの独身女性と思われるのがイヤで、仕事もていねいにこなし、振る舞いにもソツがありません。

年下の後輩たち(24歳のマリコと34歳のマリコ)が自分をどういうふうに見ているかもすべてお見通しです。

だって自分はそのすべての過程をとっくに経験してきているのだから。

会議で発言できずに悩んでいる24歳のマリコのことも、中途半端な自分にあせりを感じている34歳のマリコのことも、ちゃんと理解しています。

だけど、自分が好かれたいだけの優しい言葉は後輩たちにはかけてあげません。

「一時のぬるい共感」や「『そのままでいいんだよ』というやわらかな嘘」は本当の優しさではないと知っているからです。

でも、そう簡単に会社になじんでもらっては困る…というちょっとした意地悪な心もなくはありません。

 

そんな3人のマリコたちのさらに上に、桑田さんという女性の先輩がいます。

桑田さんはとても仕事ができる、パワフルで優しくて、気配りの人。

そんな桑田さんが、マリコたちの会社で「女性初の部長」に昇進したことで物語がさらに動き始めます。

まず、まわりの男性たちが変わります。

それまで「仕事のできるアシスタント的な桑田さん」のことを重宝がっていた彼らは、「部長になった桑田さん」のことは面白くなかったようで、冗談半分に揶揄したり、足を引っ張ろうとしはじめました。

マリコたちはそんな男性たちに憤りを感じます。

ですが一方で、「この会社にいてもどうせ女性は出世できないし・・・」とこれまで自分自身をごまかすためにしていた言いわけが、桑田さんが部長に昇進したことで通用しなくなってしまったことへのあせりを痛感することにもなっていき――

世代の違うマリコたちが働くことの意義について真剣に考えるお仕事マンガです。

益田ミリさんならではの目線で、女性たちの人生を描いています!

『マリコ、うまくいくよ』感想

この作品は、24歳・34歳・42歳の女性が登場するのですが、もう、どの世代の気持ちも痛いほどわかるのです。

それはたぶん私がアラフォーで、42歳のマリコさんと同様に、これまで社会で経験してきたことが全部つまっているからだと思います。

ベテラン社員が「協調性」「適応力」「順応力」の大切さを主張する気持ちも、

若手社員が「個人の成長」「自分らしさ」を仕事に食い込ませようとする気持ちも、

どちらも本当によくわかります。

いまは専業主婦をしているので仕事の現場から離れてしまいましたが、「そうそう、こんなことあったなー」とやけにリアルな気持ちを思い起こさせられる作品でした(笑)


立場の違う3人の女性を描くのは、益田ミリさんのお家芸。

『すーちゃん』シリーズや『週末、森で』などがお好きな方にはおすすめです。

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まとめ

益田ミリさんは、女性のさりげない、それでいてリアルな気持ちを描くのがとても上手な作家さんですよね。

サラッとしているように見えてじつはとても奥が深い。

そして一気に読めてしまうところも魅力のひとつです。

『マリコ、うまくいくよ』はそんな益田さんの素晴らしさがあふれ出る作品でした。

益田ミリさんの作品は今後も随時紹介していく予定です